青色LED特許訴訟に学ぶ、新入社員の特許との向き合い方
大学の卒業式シーズンのようで、Facebookが卒業写真で埋まっています。
技術者の皆さんもご卒業おめでとうございます。厳しいご時世ですがともに頑張りましょう。
入社して数年は専門知識に会社のルールや法律関係など勉強すべきことの多い大変な時期ですが、
業界の常識にとらわれないがために、斬新な発明を量産するチャンスの時期でもあります。
技術開発の結果とともに求められるのが知的財産(発明開示、特許など)の執筆です。
特許の数は、社内での評価や追加報酬にも直結するだけでなく、
社会への業績アピールにもなり、技術者として箔をつけていくことができます。
ノーベル賞を受賞した日亜化学工業の青色発光ダイオードの技術においても、
量産化に欠かせない技術の中でも特にハードルが高いと言われているアニーリングによるInGaN p型化技術を発見したのは、
中村さん自身ではなく入社1年目と2年目の新入社員、妹尾氏と岩佐氏であったと言われているのは有名な話。
この青色LED訴訟を振り返り、入社当時に聞いておきたかった、知的財産との向き合い方を考えたいと思います。
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このアニーリングによるGaN p型化特許は、中村裁判の肝の一つになっていたことで多くの注目を集めていました。
(青色LED製造方法に関する特許の対価が不当であったとして、日亜化学工業に200億円の支払いを求めた提訴)
このp型化特許は、一連の青色LED製造方法の中で重要な位置を占めていますが、
(量産化に必要であった3つのブレイクスルーの中でも特に実現化のハードルが高いと言われている)
中村氏の貢献度に関して議論の余地があるとされています。
具体的に説明すると記事が長くなるので他ブログに譲るとして、議論となっている点を端折ると、
中村批判記事での主張
・ p型化は妹尾氏と岩佐氏が実験を行っていたってこと。
・ 自発的な実験で、中村氏の指示を受けて行ったものではない。
公開情報(特許)から読み取れる情報
・ GaNに関するほとんどの特許も論文は、中村さんファーストオーサーで書かれている
・ 妹尾氏の名前は、該当特許に入っていない!!!
こちらが該当特許
https://www7.j-platpat.inpit.go.jp/tkk/tokujitsu/tkkt/TKKT_GM407_ToItem.action
多くの中村批判ブログではこの技術開発に中村さんは関与していないと記述されていますが、
特許自体を参照する限り、中村さんと岩佐氏の発明に他なりません。妹尾氏に至っては名前がない!!
はたから公開情報のみを見ると、東京地裁が判断した中村氏の寄与度=50%はなんら不思議ではありません。
また、批判記事には証拠となる具体的なリファレンスが公開されていないので、事実関係はなんともいえないのが実際のところ。
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もしも記事が事実だったとすると、なぜ連名と貢献者に乖離が生じてしまっているのか。
知的財産への申請方法や連名においては、個人の裁量によるところが多いのが現状のようです。
実際開発は複雑に人間が関わり、貢献の度合いは不明瞭な場合が多くなりがちです。
また、一般的なルールが明確になっておらず、会社ごとに連名の範囲も変わってくるようです。
誰の成果で、連名は誰まで入れるのか。誰が草案を書くのか。
貢献度はしっかりと反映されているか。ちゃんと自分の名前は入っているのか。
特に新入社員には、自分の名前が入るべき事案でも主張を遠慮しがちですが、
苦労して手に入れた成果が、自分のものでなくなっては元も子もありません。
では、中村さんの元で働いていたエンジニアはどうすればよかったのか。
- 知財の申請書は時間がかかってでも自分で書く。
- 実験ノートに開発の変遷をなるべく細かく記入し、証拠として残す。 (アイディア、議論内容、発言者、時間等)
- 普段から自分の権利はしっかり主張し、事前から連盟から除外される事態を防ぐ。
自分のアイディア、プロジェクトは最後の知財登録まで責任を持って管理することが大切です。
小保方さん問題でも指摘されていましたが、実験ノートは有事の際に非常に有力な物的証拠となります。
日々の業務に追われ知財関係は後に回しがちですが、最後の知的財産(発明開示や特許など)登録まで、
まとめ上げることの大切さを肝に銘じておく必要があります。